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2015-11-09【10代へ贈る】
幸福論
呑みこめない・・・
ある日、食べ物たちは私の喉を通ることを拒否するようになった。
きっかけなんて何もない。痩せたいわけでもない。
とりあえず諸々良好。
強いて言えば、子供でいることに、10代でいなければならない“いま”に辟易していた。
小さな子供ではないから自分で考え発言することはできるが、大人はまともに取り合おうとさえしない。“子供のくせに”と。
偉そうに上から押さえつけてくるくせに自分1人の収入では家族を養っていけない名ばかりの父親とか、
校則を楯にスカート丈ばかりチェックする教師とか、
納得のいかない大人の矛盾に憤りを感じつつも、進路の為に言葉を呑みこまなければいけないという現実に。
身体と気持ちと頭のアンバランスが、先に進むことを躊躇させているのだ。
痩せた身体と反比例して思考は研ぎ澄まされていくような感覚に陥る。
お盆の親戚の集まり、食欲のない私は畳に横になりながらテーブルの方を見上げると、母が鶏肉を食べていた。
大きめに切られた鶏肉には骨が付いていて、一見するとすごく食べづらそうに見え、私はいつも箸をつけるのを躊躇してしまう。
分かってるよ、芯まで味が染みてて、柔らかくてすごく美味しいってことはね・・。
しかし、母の箸が鶏肉を啄む姿はとても軽やかで・・それはそれは優雅なのだ。
鶏肉だけじゃない、お魚を食べる時もそう。
よく、食べているのか散らかしているのか分からないような人もいるが、それとは全く断固として違う。
母に食べられている鶏肉もお魚も、まさか自分が食べられているなんて微塵も気づいていない。
神業的なマッサージを受けているような、恍惚の表情さえ浮かべて。
そして食後のテーブルには、まさに骨抜きにされた骨たちが爽快な顔で、くたっとお皿の上に横になっているのだ。
「あー美味しかった、ごちそうさまー」
母は無邪気に微笑み、弾むように片付けを始める。
テレビで有名な精神科医と経済評論家、女性2人の対談記事を見かけた。
対談のテーマは、「幸福論」。
とても申し訳ないことに稚拙で貧相な私の理解力では、お2人の討論の結論が幸福に辿り着いていたなんて・・・まったく読み取れなかった。
幸福に辿り着く為に必要なこととは、逃避やヒステリー、はたまた開き直りなのだろうか?
もう少しだけ、「生きる」ということにまっすぐ向き合ってみる。
だって幸福って、もっとすぐ傍に、例えばくたっとお皿に横になっていたりするものでしょ?
どう生きるかを悩む以前に、「生きる」ということに真剣に取り組んでみる。
それはきっと丁寧に食事をしたり、無心に眠ったりすること。
そしたら少しだけ、ほんの少し、人生はもっとシンプルで楽なものになるんじゃないかな、と思うのです。
丸山 美幸
2015年 産業カウンセラー資格取得
メールカウンセラー
夢分析セラピスト
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