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2016-04-18【恋愛】
第4回新恋愛心理学-依存性からの脱出-
「依存性からの脱出」
人は誰かに全く依存しないで生きていくことは出来ません。
適切に依存しながら生きていきます。
ですが、あまりに依存しすぎると困ったことがたくさん起こります。
人間関係を壊し、孤独に陥り、結局のところ全く依存できない環境を作ってしまいます。
今回は、極端な依存性からの脱出について、お話します。
依存性の強い人は、概して、認めてほしい欲求に心も頭もいっぱいになっています。
認めてほしい欲求であることから、マズローの言う「承認欲求」と思いがちですが、
よくよく聞いてみると、依存性の強い人の欲求は、「生存欲求」に近いものを感じます。
「認めてくれないと生きていけない」「あなたに見捨てられると死んじゃう」などなど。
自分の存在価値と依存性を秤にかけるようなことをするのです。
それは、人生早期に適切な依存ができなかったためと考えられます。
子供時代に適切な依存(もちろん対象は親です)ができないと、図らずも自立の道に進むしかありません。
このような自立を「早期自立」と言います。
たとえば以下のような例があります。
・就学前の子供が毎晩寝るときに、明日の自分の衣服をたたんで枕元に用意しておく。
・小学校低学年で弟や妹のために食事を用意する。
・小学校高学年で親の相談相手になる。
早くに自立するんだからいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、これはあまりいい結果は招きません。
言葉遊びのようですが、「自立」には、「自律」が必要なのです。
日本語だと同じ読みなので、英語で説明しましょう。
「自立」は、英語で「independence」ですね。
「自律」は、むずかしい英単語はたくさんあるのですが、ここではわかりやすく「self control」とします。
英語に造詣のある方なら「自律」の英訳が「self control」というのには、異論があると思います。
その通りです。
はっきり言って、これは誤訳です。
本来なら「自制」が「self control」ですね。
辞書で調べると「自律」は、「他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること」となり、
かたや「自制」は、「自分の感情や欲望をおさえること」とあります。
したがって、「自律」の英訳では、「autonomous」が適訳であると思われます。
なぜ、このようにまわりくどい説明をするのかと言うと、ほとんどの日本人が「自律」をセルフコントロールすることだと思っているからです。
わたしたちカウンセラーもクライアントに説明するときに「自律」をセルフコントロールすることだと言っています。
なぜそのように言うのかというと、セルフコントロールが受け取りやすいからです。
はじめから、
「カウンセリングの目的は、自律的な生き方を実践することです。つまり、他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って生きることです」
とまくしたてると、どうなるでしょう。
たぶん2回目の面談には来ないでしょう。
かといって、「自律」と言うべきところを「自制」と表現するとどうなるでしょう。
「明日から自制した生活をしてください」とカウンセラーが言ったら、消極的な生き方を思い浮かべてしまうかもしれません。
あまり肯定的には捉えないでしょう。
いままでの生活が間違ってたんだ、と思うでしょう。
わたしたち日本人は、「他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って生きる」ことを積極的に望んではいないし、「自分の感情や欲望をおさえて生きる」ことも望んではいません。
すなわち、「自律」未満「自制」以上の生き方を望んでいると言えます。
(これは、あくまでも私個人の見解ですので、他所で吹聴しないように)
「自律」未満「自制」以上とは、いうなれば宙ぶらりんの状態です。
はっきりとはしていません。
これが日本人の生き方でしょう。
はっきりとしないメリットもあります。
・外国から入ってきた文化や技術を自分たちの生活に取り入れやすい。
・他者との衝突が起こりにくい。
もちろんデメリットもあります。
・自分の考え、思想、宗教、信条、感情がはっきりせず、わかりにくい民族に思われる。
・自分自身でさえ、これから生きるべき道筋がわかりにくい。
問題はここです。
依存性の種がここに芽生えるわけです。
「自律」未満「自制」以上の曖昧なポジションに慣れ親しむと自己不一致が増幅し、不安が大きくなります。
何か新しいことに挑戦しようとするときのブレーキになります。
だいたい、不安が大きくなると、人は同時に孤独感も大きくなります。
その不安や孤独感を覆い隠して、一時の安定感を与えてくれるのが、「依存性」です。
「自律」未満「自制」以上の曖昧なポジションで培われた「依存性」は、放っておくと、日本型うつ、対人恐怖などに移行する可能性があります。
「自律」未満「自制」以上の曖昧なポジションは、実は80年代後半くらいまでは、日本人の多数派でした。
自他の境界線が曖昧で、気配りと思いやりが自他の軋轢を上手に緩和していた時代です。
仕事においても「縁の下の力持ち」が一目置かれ、会社のために誠心誠意の働きをする人が重く扱われた時代です。
ところが、90年代以降は、ひとり仕事も増え、終身雇用制も崩壊し、大企業といえども倒産する時代になりました。
すると会社に依存し、ある一定のレールの上を走っていけばよかったものが、自分の才覚や自分の判断で生きていかざるを得なくなった。
すると、旧体制の日本人気質(こういうのをメランコリー親和型といいます)の人々にとっては、生きにくい社会となり、うつやその他の気分障害が増えます。
メランコリー親和型の人が社会の変化により、多数派から少数派になり隅においやられ、最終的にうつになってしまうものを特に「日本型うつ」と定義します。
ですので、依存性からの脱出は、なるべく早めに対処したほうがいいでしょう。
では、依存性を手放すにはどうすればよいのか。
「自己承認を高めること」となりますが、言うのは簡単ですが、行なうは難しですよね。
「自己承認を高める」前に、「自律」することを心に決める必要があります。
・「私は、他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って生きることを誓います」という文言を模造紙に大書して、一番目につくところに貼る。
・毎日声に出して言う。
・自律的な生き方ができたと思えるエピソードを毎日、一行日記に書く。
ここまでは、できますよね。
なぜこんなことをやるのかと言うと、これは、プログラムの書き換えです。
子供時代に刷り込まれたプログラムを「今」の環境に適応させるために、上書きするのです。
否定するのではなく、使える部分は残しながら、使えない部分を書き換えていくのです。
これをやるだけでもだいぶ違いますが、できれば、行動した成果を報告し、報酬をもらう相手が居た方がより良い結果を得やすいですね。
報酬とは、お金ではありません。精神的な報酬です。
つまり、ほめてもらう、自分の行動を肯定してもらう、共感してもらう、などです。
その相手とは、あなたをよく理解してくれる人なら誰でもいいです。
もしそのような人がいないなら、カウンセリングに来てください。
カウンセラーがあなたと二人三脚で取り組むでしょう。
依存性の書き換えは、時間がかかります。
あなたは、ゆっくり変化していきます。
その変化は、自分では気づきません。
なので、伴走者が必要なのです。
あなたの変化に気づいて、勇気付けてくれる人が必要なのです。
ダメだしする人は、必要ありません。
あなたに力を与えてくれる人、エンパワーメントしてくれる人と取り組みましょう。
次回は、「自己犠牲という名の恋愛」を書きますね。
来週をお楽しみに。
芳野 正彦
日本嗜癖行動学会正会員
米国アライアント大学大学院精神病理学履修
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